正直は「KB」をリリースしました。

養生テープが鳴らす音を鳴らす磁気テープ。鳴っているのはどっちのテープか。正直の二人はスクリーン収納用のモーターから伸びる横棒に養生テープを巻きつける。ゆっくり回転する棒に巻きとられてテープが引きだされるとき、おなじみの破裂音や持続音が鳴る。巻きとられたテープが一巻き、二巻きと増えていくと、棒に奇妙なこぶができる。手でテープを、フットスイッチでモーターを操作する正直のパフォーマンスは工員のようにも、一心に現実逃避しているようにも見える。《KB》では巻かれるテープが磁気テープに、巻きとる棒がリールに変わる。

硬く張られたテープはときおり弦のように響く。正直のパフォーマンスは東京の即興演奏シーンに混じっても違和感がない。しかし「即興」や「演奏」という言葉はあまり似合わない。正直は元々、時里がテープ使い、小林は振動するものやサウンドICを鳴らすデュオとしてはじまり、後に現在のスタイルになった。時里は個人で、キーボード上にゆっくり動く装置を置き、それが偶然打ちだした文字を音声合成ソフトが読み上げるというパフォーマンスを行なう。正直のパフォーマンスにも自動的に動くものを見守るような姿勢がある。二人はテープの持ちかたやモータを調節して、テープと横軸のやりとりをガイドする。

小林の映像インスタレーション《盛るとのるソー》(2017)について水野勝仁は、ディスプレイが「モノと映像とを統合」し、ヒトは「ディスプレイとの連動のなかで行為や感覚を決定される」と評した。時里の《見た目カウント》シリーズ(2016〜)でも、ヒトが映像とカウンターの連動を見守ったり、連動に参加したりする。彼らはメディアをあつかうとき、ディスプレイの向こうに、もしくは現実の背後にあるとされるシステムよりも、異質なモノどうしの連動に注目する。この連動にイメージもヒトも参加し、特異な感覚、風景、物語が生まれる。小林耕平のような美術家の影響は大きい。

《KB》はカセットテープというメディアを情報が入った箱ではなく、軸から軸にテープを巻きとるモノとして見せる。養生テープの粘着力しだいで音がけっこう変わるらしい。映像がなくても、正直には時里と小林がメディアをとらえる姿勢があらわれている。おそらくこの姿勢はそれぞれの現実の生活に根ざした、二人にとって嘘のないものだろう。

文・金子智太郎(美学・聴覚文化論)

© 2018 正直(shojiki)
1st Press Limited 70
Recorded by Makoto Oshiro, Feb 27, 2018
Designed by Tomoco ito
Basic Function
購入は→コチラ

「KB」リリース記念インストアライブのお知らせ
『正直インストアライブインコ本や』
ゲスト よだまりえ
日程|2018年8月12日
会場|コ本や honkbooks 〒114-0002 東京都北区王子1-6-13
時間|19:30-21:00(開場19:00)
出演者|正直、よだまりえ
チケット|1000円(+drink)
定員|15名
予約は→https://kb-release.peatix.com/view

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正直
小林椋[http://pocopuu.net/]と時里充[http://tokisato.info]によるユニット。
できるだけ正直に演奏する。